おくち・を・ちゃっく! (しない)

ぼざろについて思ったことを書きます。

【ぼっち・ざ・ろっく!劇中歌「あのバンド」】を採譜して考察・解説・感想を入れてみた

「あのバンド」LIVE at STARRY を採譜してみました。

youtu.be

"ぼざろのライブシーン"といえば「後藤ひとり覚醒」とも呼ばれる、この曲ですよね……

最初重厚感と厚みで"ロック"な曲だなと思っていたのですが、思いの外テンションノートが凝っている事に気づいたので頑張りました。

 

過去記事はこちら↓

「星座になれたら」の採譜解説

isoguin.hatenablog.com

 

新譜「光の中へ」から、「青い春と西の空」の楽器の掛け合いの解説

isoguin.hatenablog.com

 

冒頭アドリブソロ (0:00)

冒頭アドリブソロ/「あのバンド」LIVE at STARRY

冒頭のハーモニクスについて、これだけ見るとただのハーモニクスなんですが、このあとの本イントロを見ると喜多ちゃんが5フレットのハーモニクスをやっているんですよね……

なので後藤ひとりがこのアドリブを始めるとき、頭の中にあったのは喜多ちゃんのフレーズなんですねぇ。

 

前半の下のDの音について、レコーディングは4弦開放ではなく、6弦10フレットで演奏していたそう。(InstantさんのYoutube配信参考)

星座になれたらのスラップ然り、映像や弾いてみたの動画のバイアスが掛かっていたけれど、こういった情報があると新鮮な驚きができるので楽しい……Instantさんが三井さんも交えてYoutube配信をしたいと仰っていたので、またいろいろなマニアックな話を聞きたい。

 

後半の開放弦と一緒にハイノートを弾くフレーズについて、初っ端の音はEスタート、サビのコード進行がDm9なので、ちゃんとそれを踏襲している。

その後のA→Cの音について、音的にはDm7でもいいんだけど、Am→F→G→D進行の代理とも考えられるのでD7で推していきたい

その後はひたすらトップノートが上昇。Dmの上にEmが乗っかって、3度がG→G#→Aと変化しているイメージ。このポルタメント*1が気持ちいい……

ここの最後PA卓の人(大きなリングのピアスをしているのであのPAさんではなさそう)が右側のフェーダーを操作するシーンが挟まる。他に光ったり上がっているものがないのでエフェクト用の卓なのかな。となると楽器用の卓を操作しているのがPAさんか。

 

本イントロ(0:30)

0-10小節目/「あのバンド」LIVE at STARRY

このオープンハイハット4カウントが気持ちいい。リョウと虹夏が顔を合わせる0:28ところから、このテンポ感を崩さないタイミングで適切にカウントを入れているのは流石。

そしてこのイントロの各々弾いているフレーズがバラバラなのも良い。

後藤: 「ありったけの速さでかき鳴らす」Dmブルーノートスケール

喜多: なにやっているかわかんなけど白玉フレーズ(後述)

山田: Dmのペンタトニック(アクセントは2表4裏)

虹夏: フロアタムの4つ打ちに2裏4表のスネア

特に注目したいのが、リズム隊について。8分音符でまとまってはいるけど、ドラムとベースでアクセントの位置を変えているのがゴチャゴチャ感を醸し出していて、"結束"前を表現している。

 

また、イントロで出てくるG#の音がなかなかニクい。解釈としてはDmスケールのブルーノート。Dm9の存在で手前までアッパーストラクチャが組み上げられているので、Dm7に足す音としては(+11)で良いと思う。

この"ブルー"ノート、山田のイメージカラーとかけてたりしません?

 

しかしまぁ、LIVE映像見ていても、喜多ちゃんがなにをやっているのかわかりづらい……

私に聞こえた範囲で記すと、最初は5fハーモニクス→オクターブ→ユニゾンチョーキング*2→下からのスライド→ピックスクラッチかな。

"ギターのかっこいい技を喜多ちゃんに弾いてほしい"という思いがイントロに溢れ出ているし、少なくともオクターブ奏法は「星座になれたら」のアドリブソロで花が開くので、練習的な側面もあったんじゃないかな……と勝手に思ってます。

 

そしてAメロ前にリードギターのフレーズが入るのだが、先のブルーノートG#と合わせて特徴的なのがC→B。Dmのアッパーストラクチャ上に作るとするとBの音が(13)。でも他の音でこれよりかっこいい着地先が見つからないので、このリフを考えた人は天才……

 

ドラムに関しても、多数の曲でしっかり4分を踏んでいたり、ハイハットのオープン・クローズが多用されているので、虹夏ちゃん腕だけでなく脚の筋肉も凄いかも……

虹夏ちゃんの引き締まった脚……

 

Aメロ(0:44)

11-18小節目/「あのバンド」LIVE at STARRY

「あのバンド」から始まる歌詞は、原作で先に出ていたタイトルを見てから聴くと更にゾワッとするものがある。曲名が決まっていて結束バンドがこのタイミングに作る曲を考えて、そのタイトルをど頭に持ってくるセンスに脱帽……

そしてボーカルの音がEなんですよ。この位置関係は「星座になれたら」の歌いだし(D♭M9のE♭)と同じ9th山田はこういうド頭でアッパーストラクチャかますの好きなのかな、という解釈。

17小節目アウフタクトからの「笑い声に聞こえる」についても、先に編曲ができた上での作詞だったようで、ここのリードギターの音が笑い声に聞こえるというハメ方も凄い。

「ギターと孤独と蒼い惑星」については原作では曲先、アニメでは詞先に鳴っており、「あのバンド」には明確な描写はなかったものの、「ギターと孤独と蒼い惑星」でインスピレーションが湧いた山田が新曲として作り込んだ曲に対して、後藤が山田の過去やらにインスパイアされてできた歌詞なのかな……と思っています。例えばこういう考察も↓

note.com

 

19-26小節目/「あのバンド」LIVE at STARRY

ここで衝撃を受けたのが、2回目の「あのバンド」で入るコーラス、まさかの3度上。そうなるとコードがDm9からDm9(11)に変わってくる。

山田のコーラスの声質と、コードの上の音でハモっていることが合わさってものすごい浮遊感が生まれる。なんならこのコーラスだけを抜き取って、Dm(D, F, A)と弾くとものすごくエキゾチックな香りがする。

 

Bメロ(1:04)

27-34小節目/「あのバンド」LIVE at STARRY

Aメロでも出てきたが、ベースのDドロップが目立つフレーズが入る。星座になれたら(ベース・リズムギター半音下げチューニング)や光の中へ(山田:半音下げ、喜多:capo1、後藤:capo3)然り、よくこういうのを盛り込んでくるのは面白い。こういった手間をかけてでも、スケール感を大事にして楽曲を作るという山田の、そして三井さんの信念なのかもしれない。

ただし、チューニング変えるのは練習や採譜の時クソめんどいんだよな……

 

後半は畳み込むような8分の刻みでGm→Am7→B♭M7。

Gm7に関して、ギターからCの音が聞こえているように感じたけどこれは空耳だろうか……?

 

サビ(1:14)

35-42小節目/「あのバンド」LIVE at STARRY

43-50小節目/「あのバンド」LIVE at STARRY

ここのDm9→Dm7が気持ちいい……あのバンドは草野さんの作曲からあまりコードを変えていないらしい(下記参照)+Aメロの9thもあるのでこれは元からかな。うぅ、デモとかも聴いてみたい……

ちなみにDm9の押弦は5fバレーと4弦7fだけでいいので、いきなりDmを押さえに行くよりも流れで弾きやすかったりする。

rollingstonejapan.com

リードギターのユニゾンチョーキングも音が目立ってかっこいい。試しにちょっと弾いてみたけど、まず全音引っ張るの難しいし、それを連続でやるのがしんどい。それだけじゃなくて、その直後に16分の刻みと緩急が激しいので、速弾きやチョーキング等の単なる技法だけじゃない、後藤ひとりのギターの巧さに対する造詣の深さを感じる。

 

アウトロ(1:35)

51-58小節目/「あのバンド」LIVE at STARRY

アウトロのギターのリフの直前「他になにも聞きたくない 私が放つ音以外」が、編曲までされた曲に当てる歌詞として当てはめていくのが凄い。

そして46,50小節目に出てくるE♭が良い……「あのバンド」はブルーノートをすごく効果的に取り入れていると思う。

しかしここのドラムもかっこいいんだよな。ドンドタドコドンの迫りくる感じが不整脈をも彷彿とさせる

59-67小節目/「あのバンド」LIVE at STARRY

ここで入る後藤の16分トレモロ「ありったけの速さ」と称されるBPM192における16分音符=12.8Hz後藤ひとりの共振周波数。結束バンドの曲がここらへんのテンポが多いのは、この周波数の味を出したいからなのかな……

リズムギターについても、歌が入っていないとはいえ動きの多い単音弾きなので、練習の最初とかめちゃくちゃ苦労してそう。練習風景の二次創作とかしたい……

あと59小節目からのドラムのリズムが変わっていて、より不整脈感が強調されている。

 

そんでもって63小節目からの畳み掛け。

ギター2本が同じフレーズなのに対して、リズム隊が16分を混ぜることでリズムのゴチャゴチャ感が生まれている。ここのベースの音だけ取り出すとお祭りっぽいフレーズになっちゃうんだけど、このバンドサウンドの中で一番の混沌を引き出す要因になっている。

 

そしてラストは全員で8分のE♭(5)。Dマイナーの中で、最後のキメをE♭にしたのも凄いし、リズムが揃っているので結束バンドの新たな形での"結束"が表現されている。

 

「星座になれたら」との比較

「星座になれたら」で脳を焦がされたオタクなのでみんなにも焦げてほしいのだが……

【LIVE映像】結束バンド「星座になれたら」LIVE at 秀華祭/ 「ぼっち・ざ・ろっく!」劇中曲 - YouTube

・セトリ2曲目

・アッパーストラクチャ系

・Lyric Videoが踏切前

……という共通点と

8分ノリ16分ノリ

マイナースケールメジャースケール

ヘイト強めな歌詞憧れや希望モチーフの歌詞

……という対比がある。

 

この意図があったのかどうかは分からないが、この組み合わせは考察する上でも非常に重要なポイントだと思った。

「自分の好きなように」曲を書いてもいいんだとリョウに思わせたぼっちの詞になり、

「本当にヒーローに見えた」虹夏ちゃんがぼっちちゃんに「本当の夢」を託し、

その後「貴方を支えていけるような立派なギタリストになる」と喜多さんに決心させるきっかけになった、「後藤さんはすごくかっこいい」を引き出し、

「みんな大事な思いをバンドに託してる」結束バンドに対して「ギタリストとして……結束バンドを最高のバンドにしたい」と決心する後藤ひとりを生み出した。

これが第一期として「星座になれたら」で結束するわけだが、「バラバラな人間の個性が集まって それがひとつの音楽になるんだよ」を体現する存在だと思う。

 

余談

アルバム「結束バンド」収録楽曲(「転がる岩、君に朝が降る」以外13曲)のバンドスコアが出るようですよ!

www.shinko-music.co.jp

出版されたら答え合わせしたいな、という気持ちから少し急いで書きました。

考えてみれば、完コピするための譜面なのか、初心者でも弾きやすいようになっている譜面なのかなどの情報は無いですね。

それはそれで楽しみですね……

*1:元の音からチョーキングの要領で弦を引っ張り徐々に高い音にする奏法

*2:2つ弦で音を鳴らすときに、半音もしくは全音のフレット位置から、低い音の弦をチョーキングして同じ音まで釣り上げる奏法。サビ頭で後藤が弾いている4分音符も同じ奏法。シンセでいうとデチューンの様な役割になって、唸った音と2重に聞こえる音の間で太く聞こえる