おくち・を・ちゃっく! (しない)

ぼざろについて思ったことを書きます。

「星座になれたら」を採譜して細かく感想を入れてみた 1. イントロ

「星座になれたら」LIVE at 秀華祭 を採譜してみました。

www.youtube.com

ぼざろにハマるきっかけになった曲……

あとから何度もリフレインしながらメロとコードが気になったので、ギター弾けないなりに(2年ぶりに押し入れから出して)頑張ってみました。

コード進行やら奏法やら演出やらまぜこぜに感想を話しています。

Part 2  Part 3  Part 4  Part 5 

 

0-2小節目/「星座になれたら」LIVE at 秀華祭

まず注目してほしいのはこの曲のテンポ!

時計よりも少し早く、16分音符の粒立ちの良さが際立つ、BPM122~123という絶妙なチョイス。

4や6の倍数*1どころか、整数にすらならないっていうのが、ある種のライブ感を漂わせている。

1小節目

全員でジャン!っと入ったと思った瞬間にリョウのスラップが始まる……それに被せるようにぼっちのフレーズが追いかける。

というか初っ端からD♭M7である。そのためにリョウと喜多ちゃんは半音下げチューニング*2をしているのだ。

初心者(のはず)の喜多ちゃんがいるのに、この垢抜けないキラキラ感のあるA♭メジャーのアッパーストラクチャ*3を強行するリョウの鬼!!! でもこれが結束バンドのつくる世界観なんだよな……

そして半音降下するベースとリズムギター。ここのコードがCm7→Bm7→B♭m7と単純に降りているようで、ぼっちはC→A♭→B♭、すなわち一瞬入る音はBm7(13)である。

その裏で虹夏がやっているのはクラッシュのチョークからのハイハットの16分オープン……シブい。けどこれが迫力あってかっこいいんだよなぁ……

アッパーストラクチャがなぞるメロディの爽快感と、コード進行の美しさをあえてぶつけて影を作る。この瞬間に「星座になれたら」という楽曲の方向性が決まったと言っても過言ではない。

2小節目

一瞬のブレイクが入ったと思ったら突然のE♭9*4である。オノマトペにするとしたら「キタ~ン」しかないでしょ、これ。しかも3rdを抜いて9thを含みがらもトップ音は2弦から6度抜けた7th、オシャレだ……

しかしこれをド頭で弾くのはなかなかに緊張する。この部分だけでも相当練習したんだろうな……

そんでもってリョウのスラップによる16ビートのノリが見えたあとに虹夏が叩くのは三連符である。ドウシテ……
これがさっきのキタ~ンのあとに来るもんだから、一気に雰囲気が引き締まる。

このたった2小節の間に、4人全員の見せ場を作って畳み掛ける感じがとても好き。

 

3-5小節目/「星座になれたら」LIVE at 秀華祭
3小節目

三連符でリセットされたイントロが、今度は虹夏の16ビートの上で再構成される。

4小節目

ロディアスなスラップとそれに呼応する虹夏のドラム。2拍目の頭のスネアがベースの休符に入り込む感じ、リョ虹の呼吸を感じる……

「星座になれたら」において、虹夏が刻む16ビートのスネアの位置が良く裏裏に入るけど、2つ打ちをせずにシングルストロークで叩いているの、"音がでけー"のが気に入った虹夏らしいな……

そして3拍目の喜多ちゃんのコードがイントロ後半のノリを作り出す……ストロークのノリが、ハーフタイムシャッフル*5とは言わないまでも、アップとダウンのタイミング差によって生まれる自然なハネが聞いていて心地いい。

5小節目

ここで入ってくるのはぼっちのワウペダル!*6

虹夏の16ビートの下を支える4分音符と同じタイミングで踏まれていて、今度はぼ虹の呼吸を感じる……

わざわざハイハットのフットを記入したのは、裏拍部分で少しペダルが緩んだ音が出るからである。打ち込みでは出せないニュアンスだけど、これがまたいいリズム感を作り出す。

 

6-8小節目/「星座になれたら」LIVE at 秀華祭
8小節目

ここで突然現れるのはAM7! 

ルート的には半音下降の続きなんだけど、ぼっちとリョウの音が上に行っているので、独特の浮遊感が生まれる。

喜多ちゃんのギターもセーハ*7しながら半音降りるのではなく、6フレットに上がって5弦ミュート。こういうFやBコード系の単純な移動だけじゃないコードを織り交ぜてくるのは面白いし、勉強になる。

この曲全体を通しても、喜多ちゃんの頑張りとリョウの「コレもいけるか」ってラインのせめぎあいがたくさん見受けられて、バンド練習後のリョウ喜多レッスンの内容の妄想が膨らむ……

 

9-10小節目/「星座になれたら」LIVE at 秀華祭
9小節目

AM7からのA♭M7で単純な半音降下とは思えないほど見事な解決。

私の共感覚ではA♭のアッパーストラクチャの色がオレンジ~紫のグラデーションを感じるので、この後の歌詞「もうすぐ時計は6時」というのがすごくマッチしている。

この2小節の間に、ここまでのシンコペーション優位なフレーズからA♭M7の解決に合わせてリズム隊のノリが落ち着いているのがいい。

そしてこの上に乗っかるのが6連のハンマリングをするぼっち。中指と薬指の動きから察するにきっとテクニシャン……

最後の音がE♭になっていて、この後9th(E♭)で歌い出しをする喜多ちゃんのエスコートを感じる……

 

余談

ぼっち・ざ・ろっくの楽曲(特に劇中歌)は、音だけでなく、アニメーションで描かれている部分も多くて音が採りやすい!……なんてことはなくて、かなり苦戦しました。

特に、私はギターを弾いてこなかった人なので、指板で構成される音の感覚が新鮮でした。ぼっちパートについては三井さんの弾いてみた動画 

TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」劇中曲「星座になれたら」を弾いてみた by 三井律郎 - YouTube

が非常に参考になりました……

もちろん映像がサポートしてくれる部分は大きかったけど、それ以上に彼女たちの演奏と耳との辻褄合わせが難しい…… でもその分解釈が深まって良かった。

三井さんを始めとする結束バンドの"音"の人たちの演奏と、モーションアクターさんたちの"骨"の人たち、アニメとして抜き出されていない部分も見たい……

設定資料集以上に難しいものがありそうだけど、アニプレさん、映像化してくれませんかね……

 

↓Part 2↓

isoguin.hatenablog.com

*1:アナログのメトロノームを使ったことがある人は感覚があると思うが、120周りで目盛りがあるのは108, 112, 116, 120, 126, 132とデジタライズされている。もはやデジタルのメトロノームが主流なので、その間のテンポもアナログ的に自由である。……ワードが逆では?

*2:ギターのレギュラーチューニングはE,A,D,G,B,E、LIVE映像で抑えているフレットやたまに出る開放弦の音からして、全て半音低いE♭,A♭,D♭,G♭,B♭,E♭にチューニングを変えている。採譜をして思ったのが、この曲を弾くときにチューニングを全部の弦で変えなきゃいけないのがなかなか面倒くさい……つまり練習するのも多分面倒くさい

*3:ドミソの和音の上にシ・レなどの5度上の音を積み上げることで、音の濁りを強めずにオシャレな緊張感を持たせるテンションコード

*4:構成音はE♭, B♭, D♭, F。Bm7/E♭にしても良かったけど、この曲の本質は5度重ねだと思っている

*5:8分音符をハネさせるシャッフルに対して、16分音符をチャッカチャッカとハネさせるリズム

*6:ギターの音色を変えるエフェクターの一種。バンドパスフィルターで強調される周波数帯を変化させることで「ワウワウ」した音になる

*7:コードを押さえるときに人差し指などで指板全体を抑える奏法