【ぼっち・ざ・ろっく!劇中歌「星座になれたら」】を採譜して細かく感想を入れてみた 4. アドリブ, ブリッジ
「星座になれたら」LIVE at 秀華祭 を採譜してみました。
part1はこちら↓
「星座になれたら」を採譜して細かく感想を入れてみた 1.イントロ - おくち・を・ちゃっく! (しない)
喜多ちゃんのアドリブ (1:25~)
45小節目
ぼっちが直面したギターの故障に対処できないままソロパートに突入。そこで機転を利かせたのは喜多郁代。
パワーコードから1,2弦の開放弦を使ったローフレットに移動。急にローフレットに持っていこうと思いつくのはすごい。開放弦の厚みのある音がなることで、会場は喜多ちゃんのギターに視線が移動する。開放弦でエンジンを掛けた喜多ちゃんがオクターブ奏法を使ったアドリブに突入する。
この構図はアニメ8話でぼっちが魅せた「あのバンド」冒頭のアドリブにおける演出に対応していると思う。
なにげにすごいのがリョウもここで予定(CD版)とは違うフレーズを弾いている。CD版ではパワーコードを弾く喜多ちゃんの分、高い音のアソビを入れたフレーズが多い一方で、喜多ちゃんのアドリブに反応してアソビの少ないベースラインを弾いている。
表に立って場を繋ぎながら、ぼっちを引っ張る喜多ちゃんだけでなく、それを支えるリョウのベースと、冷静に次の判断を待つ虹夏のドラム。三者三様の結束力が光る。
48小節目
オクターブ奏法を使ってA♭のストロークをする郁代の裏で、リョウのベースがハイノートへ動く。ここのベースラインが、CD版のぼっちのソロで演奏されている裏拍ハイノートのフレーズを彷彿とさせる。アドリブに対応して、支えるとこは支え、出るところは出る。流石です……
50小節目
ソロパートを魅せるためか、シンプルなコード進行が続いていたところに突然現れるG♭。最初はただ驚いていたが、この後の展開のエンジンを踏むコードとしてA♭メジャーの中で鳴る2度下平行移動のG♭以上にふさわしいものはない。*1
そしてこのコードのリズムギターが高い音のアルペジオになっているのも、ここまでのオクターブ奏法との切り替えを感じるし、キックダウンしたコードの上でより一層の輝きを放っている。
ここでのセリフが「皆に見せてよ 本当は…後藤さんはすごくかっこいいんだってところ!」。まぶしすぎる……!!!
51小節目
ここで唸りを上げる後藤さんのギター。
エヴァ○ゲリオンに例えるなら、機能停止した初号機が撤退限界2秒前に雄叫びを上げながら復活するシーンである。この瞬間に口の前で手を組む虹夏が、隣に立つリョウと目を合わせて「続けろ」と司令を出すイメージが浮かぶ。勝ったな……
そいちさんのこのtweetがこのシーンを詳しく説明されていますので、ご一読を……
【あのシーンを語りたい】あの文化祭ライブの回ですが、これが分かるとあのシーンをもっと深く味わえるというのを僕なりに語らせて下さいお願いします
— そいち (@soichi1111) 2023年2月12日
さあ、あの3分間に何が起こっていたのか、見ていこうじゃないか(何者だ)
↓公式動画参照
#ぼっち・ざ・ろっく https://t.co/Q7e5X0vH7i pic.twitter.com/iQIT2nCBVu
ぼっちのソロ (1:38~)
52小節目
ぶっつけ本番のボトルネック奏法でのアドリブ。フレーズを考えるだけでなく、チューニングを合わせながら弾けるのすごい……
いつもの指板の感覚とは異なる位置で押さえなきゃいけないし、文字通りスライドされるので安定感がなくて難しい。それをベンドやビブラートでかっこよくフォローしているのも流石*2。
ぼっちがギターを練習してきた3年間に培われた物が発揮されている感じ、とても良い……
もう見てもらうしかないのだが、切れた弦がネックから下がって揺れながら、光を反射して光っているのである。これはアニメーションになったときに映えるように考えられた変更だろう。(喜多ちゃん! これも映えですよ! 映え!)*4
フィクションとリアルを両方追求することで、説得力と臨場感のある演出が出来上がる。これこそがぼっち・ざ・ろっくの真骨頂だと思う。
私はそういう作品が好きである。
58小節目
オクターブ奏法にトレモロを合わせるとこんな風になるのかと感動したシーン。G♭の上でなぞるフレーズが気持ちいい……
そうして大波乱のソロパートが幕を閉じる。
ブリッジ (1:56~)
60小節目
ソロが終わっても気を抜けないのが結束バンドの楽曲の味である。このブリッジに構成されている音楽的な要素のひとつひとつが素晴らしい。
- リョウの上ハモ
サビでは下ハモをしていたリョウが、このシーンだけ上ハモに移動するのである。水野さんの透き通ったコーラスがキラキラ響いて良い……とても好き。 - ローフレットのバッキング
「星座になれたら」ではリズムギター(とベース)が半音下げチューニングを行っているが、バレーコードを多用しており、実はレギュラーチューニングでも弾けるのでは? と思っていた。
だがここに来てその本性が現れる。基本形はD♭→E♭→Cm→Fmなのだが、ローフレットで開放弦を織り交ぜたバッキングになっているのである。振動する領域の広い弦が太い音を作り出し、先述のハモリが乗っかることで空間全体に音が広がる。これがソロの直後に入るもんだから、音楽の方向として落ち着くのではなくて、より盛り上がる。 - ドラムとベースのリズム
ソロパートで8分音符主体のリズムになっていたが、ここに来て本来の16ビートを再燃させる。ドラムのキックも4つ打ちから裏裏を入れたパターンになっている。 - ライドシンバルを使ったフレーズ
ここで初めてライドシンバルが使用される。しかも裏打ちだけでなく、1,3拍目頭にも入っている。(抜き出すとタタータのリズム)キラキラ感・しっとり感だけでなく、どんな展開が来るのか、次への期待感が高まるフレーズである。 - リードギターの8分音符
ずっと4弦でE♭を鳴らしながら、5弦の音をA♭→G→B♭とするだけである。それだけなんだけど、ものすごく哀愁があってかっこいい(真似しやすいフレーズです)。
ぼっちはこのパターンを繰り返しながら、喜多ちゃんのギター音が隣に来たり、重なったり、また離れたりを繰り返すのが良くないですか……?!?!??!?!!
……といっぱい"ここすき"ポイントがあります。
61小節目
Cm7(13)かなと思っていたけど、D♭→A♭→A♭→D♭と考えると連続性が美しいので分数コードのA♭M9/Cで書きました。構成音は同じです。
62小節目
D♭M9のあとに来るのがE♭である。アッパーストラクチャの中で急に来るド直球の3和音に集まるのがグッとくる。
63小節目
譜面上ではコード進行はCm7→Fm7。リョウのベースは高い音でフィルが入る。
ここで喜多ちゃんが弾いているコードは(恐らく)A♭。ふと下の音がいなくなって浮遊感漂う中で、厚めに弾かれるメジャーコードがいい味を出している。
66小節目
メロディとハモリの音が上に移動しながら、やっぱりド直球の三和音、E♭。めっちゃいい。
67小節目
ここのリョウのベースが高いところから降りてくるフレーズ好き。
コード進行もそれに合わせて変わるのも細かい。
68小節目
第三のキメディミニッシュコードが含まれない分シンプルだけど、ものすごい求心力。全体的にD♭始まりA♭系解決が多い中で、直球E♭で解決させているのがすごく印象的。なんならトップノートがE♭である。
ラストぼっちがオクターブ奏法になるのも、喜多ちゃんへの意匠返しを感じてしまう……
そして今度こそトゥッティで合わせる虹夏のドラム。これまでキメでド直球の合わせをしてこなかったのがここで活きる。
余談
喜多ちゃんの"かっこいい"後藤さんへ寄せる期待と信頼が溢れていて、ここまで上手くなった説得力もちゃんとあるのがいい。
「ぼっちのボトルネック奏法がすごい!」というわかりやすいテーマに対して、その周りを最高の演出とストーリーで固めており、"アニソン"として最高峰の楽曲であると思っている。
Cメロとも呼ばれるシーンにこれだけ詰め込めるのに憧れるな……アニメのOP,EDだとカットされてしまうけど、ここにフィーチャー出るのが劇中歌ならでは。
個人的に「星座になれたら」は、歌詞・メロディ・コード・アレンジ・ストーリーの全部に対して、自分もこういう曲を作りたいと思わせてくれる楽曲です。
楽曲アワード2022 グランプリおめでとうございます!! ユーザー投票断トツだったらしいですね……
↓Part 5↓